Interview

株式会社あじとや 取締役 永井 義人 さん「沖縄黒糖の可能性を広げたい」

永井 義人 さん 株式会社あじとや 取締役
永井義人さん 株式会社あじとや 取締役
2015年に株式会社あじとやを設立。カレー大学(株式会社カレー総合研究所※)修了生。沖縄黒糖とスパイスを使用したソフトクリームを開発し、カレー・オブ・ザ・イヤー2024特別賞を受賞。
※カレー大学は、株式会社カレー総合研究所が運営するカレーを総合的に学ぶための大学。カレーに関する基本知識を学び、卒業後はカレー伝道師として、真のカレーを伝え、カレー業界全体を導く。(株式会社カレー総合研究所ウェブサイトより)

「沖縄黒糖とスパイスを使用した斬新で新しいソフトクリームを開発した株式会社あじとや(沖縄県那覇市)。沖縄黒糖を使用したカレーを提供する傍ら、沖縄黒糖とスパイスを使用した商品開発など、新しい取り組みにも挑戦しています。沖縄黒糖を活用した商品開発を続ける、株式会社あじとや 取締役の永井義人さんにインタビューしました。」(インタビュー日:2024年1月22日)

あじとやのカレーには沖縄黒糖を使用していますが、そのきっかけを教えてください。

あじとや代表の山崎はもともと仙台でカレー店を営んでいました。2011年の東日本大震災に被災後、家族で沖縄に移住してきました。沖縄でカレー店を開業するにあたり、これまで使用してきた上白糖を沖縄県産品である黒糖(以下、沖縄黒糖)にしてみたら面白いのではないか、という発想で使い始めました。実際に上白糖を沖縄黒糖に替えたところ、味に深みが出てますます美味しくなったことが、沖縄黒糖を採用した決定打になりました。後々、知ったのですが、この時に使用していたのは、沖縄黒糖ではなく、沖縄黒糖を使用した加工黒糖(※)でした。当時は沖縄黒糖に関する知識がなく、違いについては全く知りませんでした。(※沖縄黒糖(純黒糖)はさとうきびだけを煮詰めた黒糖100%の黒糖ですが、加工黒糖は、さとうきびだけを煮詰めた黒糖のほかに粗糖や糖蜜を含んでおり、黒糖100%ではない黒糖を指します。)

試作を繰り返すなかで、加工黒糖からミネラル豊富な純黒糖へ切り替えることでより、健康に考慮したメニューを目指し、また、使用する沖縄黒糖は多良間島産としました。多良間島産黒糖を使用したのは、沖縄黒糖の産糖量(製造できる数量)が最も多く安定供給できる点、また、島のさとうきび生産者全員がエコファーマーであるという点から決めました。さとうきびの生産から黒糖製造まで、生産者と工場関係者が力をあわせて沖縄黒糖作りに取り組んでいるということもあり、あじとやでは多良間島の黒糖を使用しています。

沖縄黒糖カレー

新商品として販売している「スパイスクリーム」について、教えてください。

カレーで使用するスパイスをスイーツ用に配合し直し、スパイスのデザートを作りました。沖縄黒糖のほか、ウコンやカルダモン等自社の沖縄黒糖カレーに活用しているスパイスで構成されています。スパイスを使用したソフトクリームである点も他に類を見ない特徴ですが、食用炭で黒くしたコーンと黄色いソフトクリームという色合いが映える商品だと考えています。

スパイスクリーム

「スパイスクリーム」の商品開発に至った背景を教えてください。

カレーを提供する事業者として、スパイスの可能性を広げたい、知ってもらいたいと考え、商品開発に着手しました。スパイスという言葉を聞くと、カレーというイメージが浮かぶ方も多いと思いますが、そのイメージがかえってスパイスの可能性を狭めていると感じていました。つまり、カレー以外にもスパイスを活用した美味しい料理やスイーツを作れる可能性があるにもかかわらず、あまり知られていない状態だったのです。15年ほど前、神戸のイタリア料理店で食事をしたとき、スパイスをたっぷり使用したデザートが出てきました。その感動がいまだに残っており、あの時のようなスイーツを作りたいと思ったこともきっかけの一つです。実は、スパイスクリームのほかに、あと2つ別の商品開発も企画していましたが、沖縄黒糖とのバランスをうまく調整しきれず、商品化にたどり着いたのは、このスパイスクリームのみでした。

スパイスクリームは商品化にいたりましたが、商品開発の際には、とても苦労しました。沖縄黒糖の良さを活かしながら、相性を見極めることはとても難しいです。特に、沖縄黒糖は風味や味が強いため、少量でも他の食材の存在感をうち消してしまいます。黒糖感が強いだけであれば、沖縄黒糖そのものを食べるのと変わりません。そうではなく、組み合わせる素材の良さを活かしながら、沖縄黒糖の良さも伝えたいと思いました。

この度は、カレー・オブ・ザ・イヤー2024の特別賞の受賞おめでとうございます。スパイスクリームはどこで食べることができますか。

スパイスクリームはあじとや・のうれんプラザ店で販売しています。トッピングとして、スパイスや沖縄黒糖を上からふりかけて追加することもできます。

カレー・オブ・ザ・イヤー2024では、ソフトクリームとスパイスという、意外な組み合わせと、沖縄を代表するご当地スイーツを目指した点を評価いただき受賞となりました。沖縄に来た際には、あじとや・のうれんプラザ店にお立ち寄りいただき、ここでしか食べられないスパイスクリームを経験してみてください。(あじとや・のうれんプラザ店

今後はどのような活動を予定していますか。

沖縄黒糖カレーを提供する仲間を増やしていきたいと考えています。最近では、沖縄らしさとスパイスの1つとして沖縄黒糖を使用するカレー店が増えてきました。そこで、沖縄黒糖カレーという沖縄の新しい食ブランドを構築したいと考えています。まだ立ち上げ段階ですが、「みんなの沖縄黒糖カレー部」という事務局を設立し、沖縄県内外の飲食店・カフェ・ホテル・食品加工事業者と一丸となって沖縄黒糖カレーブランドを共有し、PRしていければと活動中です。